138話のネタバレ注意&138話見てないと意味不明&短い
本編でベクターがどう思っていたのかな~
という妄想爆発小説
「ベクター。お前はもう用済みだ。」
ドンサウザンドが俺に死刑宣告を告げる。
やめろ。嫌だ。死にたくない。
誰か助けてくれ。そういいかけて気づく。目の前には俺が陥れ苦しめてきた人しかいない。こいつらが俺を助けようとするわけがない。
いや、たとえここが何処であろうと、どんな状況であろうと俺を助けてくれる人などいない。
当然だ。俺は一人で生きてきた。一人でなんだってしてきた。友や仲間なんて一人でも十分生きていける強い俺には必要ない。
他人など俺にとってただの道具でしかなかった。仲間など弱者が縋るものだと思っていた。
だから、どうにかして生きようと必死に一人でもがくしかない。
怖い。
死にたくない。
ドンサウザンドの攻撃の威力はますます強まり俺は吹き飛ばされる。
「かっとビングだ!俺!」
聞きなれた言葉とともに暖かいものが手に当たる。
遊馬の手だった。
この場に及んで俺を助けようとするとは相当な馬鹿だ。心の中でこの馬鹿を見下す。
「敵であるベクターを助けるのか。九十九遊馬。」
「遊馬やめろ!そいつに心はない!」
俺には心はない。
おかしなことを言う。だったら何故俺は恐怖心を抱いているんだ?
心がないというのなら。恐怖など感じているはずがない。
神になりたいなどと野望など抱くはずがない。
「助けてもまた裏切るだけだ!」
ああ、そういうことか。
俺にないのは、他人への愛情というその心か。
馬鹿馬鹿しい。そんなものは弱点にしかならない。
前世でのことを忘れたか?ナッシュ。
お前は妹であるメラグと自分を慕ってくれる臣下への愛情を、他でもないこの俺に利用され自国を滅ぼした。
そんな不要なものおれには必要ない。
「だったら…だったらもう一回信じる!心がないなら心ができるまで何度でも信じる!」
「それが俺のかっとビングだ!」
信じ続けて何になる。心ができるとでも言うのか?
お前が何度でも信じるというのなら俺は何度でもお前を裏切ってやるよ。
「お前にだって良い心はある!真月だったときだ!いつも陽気で、いらないおせっかいして俺も皆もお前が大好きだった!仲間だったんだ!」
「お前の本当の姿は真月零なんだ!」
「俺が真月…。」
なんと滑稽な話なんだろうか。俺が遊馬を騙すために演じてきたキャラクターを俺の本当だと?
笑わせるな。今、お前の目の前にいるゲス野郎。それが俺だ。ベクターだ。
分からないなら、分からせてやる。
「そうだ、お前は真月なんだ。だから俺とやり直そう。真月!」
「遊馬…君…」
腕がそろそろ限界だ。おそらくこいつも一緒だろう。
いくら善人ぶったところでお前も所詮自分がかわいくて仕方ない奴なんだろう?
大切なのは自分で裏切りまくった俺じゃないんだろ?いざ死ぬとなると怖いだろう?
あまりの怖さに俺なんて見捨てて保身に走るんだろう?
さあ、お前のそういうところを全部ぶち撒けろ、醜態を晒すが良い。
「なら、俺の道連れになってくれよ!俺と一緒に逝ってくれよ!遊馬ぁ!」
さあ、逃げろ。怖いと泣き喚け。
見捨てろよ。俺を。
遊馬の手をがちりと掴む。まあ、逃げようとしたところで俺の手を振りほどくのは無理だろうなあ。
こいつを道連れにするとなるとほんの少し気持ちが楽だ。赤信号皆でわたれば怖くないというやつだろうか。
一緒に地獄に堕ちた後、お前の醜態を散々なじってやる。
「さあ、こっちへ来いよぉ!」
さぁ、遊馬クン。怯えきった顔を見せてくれ。
「…っ!」
なんだその顔は。
「ああ、いいぜ。真月。お前を一人にしない。」
馬鹿な。俺と一緒に死のうというのか。
「お前は俺が守ってやる。」
口先だけだと思っていた。
いざとなったら見捨てると思っていた。
なのに、この場に及んでも本当に俺を見捨てたりしないというのか?
信じられない。
―今日からお前は俺たちの仲間だぜ!
――友を見捨てたりしねぇんだよ!
―――俺がお前を守るからな
…前から遊馬はそういうやつだったな。
信じられない行動だがこいつは遊馬は絶対に俺と一緒に逝ってくれるだろう。
ああ、負けだ。負けたよ。遊馬。
俺はお前から信じ続ける気持ちを、かっとビングを奪うことなんて到底できやしない。
そっと遊馬から片方の手を離す。
「とんだお人よしだ。」
本当に優しすぎる。
「馬鹿馬鹿しい。」
馬鹿馬鹿しくなるほど真っ直ぐだ。
「君なんて道連れに出来ないよ。」
そんな君だから信じてしまった。信じたいと思ってしまった。
だから、感じてしまった。絆というものを。
そして知ってしまった。人と人との繋がりが与える勇気を、その強さを。
寂しかった心にたった一人の味方が出来た。たった一人、だけどそれで十分だった。
「おい!真月!?」
真月…か。
――おやおや、寂しいなあ。遊馬君。もう真月とは呼んでくれないのかい?
きっと遊馬は俺の煽り台詞を真に受けて俺のことを最後まで真月と呼んでくれたのだろう。
本当にいちいちよく覚えてられるものだ。素直に感心する。
やっぱり君には最後の最後まで敵わないな。
「さよならだ。」
俺はもう死ぬ。
だけど怖くはなかった。目の前に信じたいと思った人がいるから。
そしてその手を離しても、離れないものがあると気がついたから。
俺は一人で死ぬのが怖かったんだろう。寂しかったんだろう。だから、道連れが欲しかった。
でも、結局誰か一緒にいたとしても心は一人ぼっちだったんだ。
そのひとりぼっちの心に遊馬という味方が出来たから。
もう俺だけで死ぬのは怖くない。
むしろお手をつないで一緒に死んで、それで友達を失うことのほうが怖いとすら感じてしまう。
だから、もう片方の手を放した。
真月零。
君を裏切るためだけに作った君のためのキャラクター。
今は、君のために何の作意もないありのままの自分として、
友情と精一杯の感謝をこめて真月零であったときのように名前を呼ぼう。
「遊馬君。」