友を救え―怪異編―
現行・未通過× ネタバレしかない
HO2でエンドBでした。すんごくエモくて、終わった後もその後どうなるのかな……とかずっと考えてた。
考えてたら小説が出来上がっていた。何故……。
追記をとじる
友を救え後の二人は業が深くなってしまった……。
HO2:高城 謙信https://emoklore.charasheet.jp/view/28520
HO2の友人:伏見 春生https://emoklore.charasheet.jp/view/35172
事件後の高城謙信
高城は伏見が辛い目に合ってる中でのうのうと生きていたこと、そして伏見が罪の意識を抱えながら生き続けることを理解しながらも生き続けて欲しいと願い、無責任に救いの手を差し伸べてしまったことに対して罪悪感を抱いている。そして、その責任を取るために伏見を庇護し続け、伏見が幸福だったと言って死ねるようにすることが自分の生きる意味であり、使命であると感じるようになっている。己の復讐心を隠しながら、伏見の前では幸福そうに振舞い続けるんでしょうね。いつか、母親のように伏見が目の前から消えてしまうのではないかという恐怖におびえながら。
事件後の伏見春生
伏見は伏見で大切な人たちを殺してしまったという罪悪感に囚われている。本当は死にたくて死にたくてしょうがないが、死ぬことで罪悪感から逃げることへの嫌悪感や自分が生きることを望んだ高城謙信や田中翔平への申し訳なさが枷となり死ぬことが出来ないでいる。
毎晩、自分が高城謙信を殺そうとしているという悪夢に魘され続けるんだろうな……
とか、考えてたら小説が出来上がっていた。
以下ED後の誰…得…誰得・・・俺!?俺得!俺!俺!Ole!Ole!Ah 真夏のJamboreeレゲエ(以下略 小説
寝る前の妄想を纏めただけの完全俺得(というか自分以外誰にも分からん)小説
ED後から数週間経った後の伏見(HO2の友人)視点です。季節は夏。
(殺す……殺せ……)
脳内を支配する殺せという声に抗うこともせず、目の前にあるそれを殺そうと触手を振り上げる。
振り下ろした触手は謙信に当たり、身体を吹っ飛ばした。
壁に当たった謙信だったものは骨の砕ける鈍い音を鳴らしながらその場に頽れる。歪に折れ曲がった身体と飛び散った血と肉塊が高城の死をまざまざと物語っていた。
その光景に俺はただ……
身体を揺すぶられ目を覚ます。心配そうに覗き込む謙信の顔がそこにはあった。
「大丈夫かいな。えらいうなされとったで」
謙信の言葉に徐々に思考がクリアになる。また、あの悪夢か。
「また、起こしてもろうてしまったな。大丈夫や、おはよう」
そう言って笑顔を作ると謙信は安堵したように微笑み、いつものように台所に向かう。
「今日の朝食は俺の大好きなフレンチトーストや~」
少し離れた所から聞こえる謙信の声を聞きながら、俺は先ほどの悪夢を思い出していた。
いや、あの夢は悪夢と言えるのだろうか。施設で謙信と対峙した数週間前の出来事を思い出す。
あの時は俺の攻撃を察知した謙信が避けてくれたから謙信は軽症で済んだけれども、一緒に俺を解放しようとしてくれていた美優連さんには瀕死になるほどの重傷を与えてしまった。少しでも運が悪ければ、先ほどの悪夢は現実になっていただろう。そして、その光景に俺はただ……
「ごめん、フレンチトースト嫌いやったか?」
きっと暗い顔をしていたのだろう。俺の顔を覗き込む謙信の顔は不安げで何故だか泣きだしそうに見えた。
「いや、大好きや。ちょっと夢のこと思い出しとった」
「そっか……。まあ、夢は夢や。美味しい~フレンチトースト食べて忘れるに限るで」
「せやな。ほな、いただきます」
手を合わせて、口いっぱいにフレンチトーストをほおばる。砂糖と牛乳を含んだ卵の優しい甘みと柔らかな黄色が謙信の優しさを彷彿とさせた。咀嚼し、飲み込むと胃に溜まった重みが生きているという実感となり身体を満たす。研究所に閉じ込められていた時にはもう二度と戻らないと半ば諦めていた日々がここにはあった。
にもかかわらず、心は満たされなかった。
フレンチトーストを咀嚼するたびに、胃を満たすたびに俺が仲間から奪った些細な幸せを享受しているということを自覚させられた。堪えようのない生の実感が、罪悪感が、吐き気となって込み上げる。
これは罰だ。生きたいと願い、助けると約束した仲間を殺しておきながら、その罪悪感から逃げるために死にたいと願う俺に科せられた罰だ。
込み上げた吐き気を押し戻すようにフレンチトーストを無心で口に放り込む。俺には死ぬなどという無責任なことは許されていないのだ。ならば、生きるために食わなければならない。どんなに苦しくとも、辛くとも、俺にはそれを抱えて生きることしか許されていないのだから。
「そんなに急いで食べんでも、フレンチトーストは逃げへんで。俺がいくらでも作ったるやん。」
謙信が急いで口に放り込む俺の様子を見て少し呆れたように笑った。
このフレンチトーストは謙信そのものだ。
優しい甘さはほんの少しの幸福を与え、胃を満たす重みは生への実感を与え、そしてその存在は死を許さぬ眼差しとなって俺に前に横たわっている。
朝食を食べ終え、ベッドに横になる。したいことは何もなかった。
事件前までは色々としたいことがあったはずなのに、そのどれもが空虚で無意味なものに思えて身体が動かない。一度、気分転換に謙信と外に出てみたことがあるけれど、通りがかる車や崖などの目に映るものすべてが死の誘惑となって襲い掛かり、逃げるようにして部屋に戻ってきた。
きっと本当にしたいことは自殺なのだろう。そして、そのことに謙信も薄々気が付いている。
だからこそ、俺から目を離さないように一緒に住もうなどと言い出したのだろう。
謙信は実況動画を撮る時間が長くなった。俺を養う必要があるからというのもあるだろうけれど、それ以上に俺に対して“実況を取っている間は静かにしとってな”と頼むことで俺がベッドに横になって何もしないでいることを正当化してくれているように感じた。その証拠に実況を撮るのは俺がベッドで手持無沙汰にしている時だけで俺が片付けや掃除をしている時に実況を取るから静かにしておいてくれと頼まれたことはなかった。
そんな謙信に感謝の念を感じると共に俺のせいで人生を狂わせてしまったという罪悪感を同時に感じていた。
謙信の方をチラリと見やるとゲームをしながら画面に向かって突っ込みを入れていた。笑いながらゲームをプレイするその目には日に日にクマが濃くなっている。
謙信は表向きは以前と変わらずアホなことばっかりやっているけれど、時折酷く濁った暗い目をしていることがある。この前、夜中に起きたときに謙信がパソコンの前で紙切れを眺めながらちょうどそんな目をしているのを見てしまった。あの紙切れは研究所の資料室で見つけ、謙信が一度破り投げ捨てた紙であるとセロハンテープで貼り付けた跡を見て察してしまった。謙信の目とは思いたくない酷く冷たい目にその時は書かれた内容を聞くことが出来ず、そのまま寝ているふりをしてしまったがあの紙に謙信が憎しみを向ける何かが書いてあることは明白だった。
直接聞く勇気はないけれど、寝る間を惜しんで謙信が何をしているのかを知りたい。きっと俺のせいなのだろうけれど、それでも知りたかった。
謙信が俺から目を離す時間といえば風呂の時間ぐらいしか無い。いつものように惰眠を貪り、死んだような時間を過ごしながら謙信が風呂に入る時間を待った。
謙信が風呂に入るのを見届けると引き出しをそっと開いて例の紙を探した。俺が勝手に引き出しを開けるとは思ってもいなかったのだろう。手帳に挟まれたそれは簡単に見つかった。
『見積書』と書かれたそれには田中翔平君の名前と材料費・エサ代等の代金が書かれており、その料金の全てがボールペンで乱雑に黒く塗りつぶされていた。光に透かし、かろうじて判別できたエサ代3000円の文字に乾いた笑いが漏れる。到底、人間の食費とは思えない値段に自分がモルモットであったことを思い知らされた。きっと謙信は俺たちがモルモット扱いされていることに怒りと憎しみを覚えているのだろう。黒く塗りつぶされた跡と挟んでいた手帳にびっしりと書かれた情報からそれを伺い知ることが出来た。そんな謙信の怒りとは反対に俺の心はその見積書を見ても少しも動くことはなく、きっと俺の見積書もあったんだろうな、だとか俺の値段はいくらだったんだろうかだとかどうでもいいことばかりを考えていた。
謙信のように怒ることが正しいとは思っていても、心はちっとも動かないのだ。
きっと、俺は文字通り人でなしになってしまったのだろう。
だからこそ、謙信の怒りが憎しみが有難かった。俺にはもう抱えることの出来ない感情を謙信が肩代わりしてくれているようにすら感じた。本来ならば、謙信のことを考えて復讐など辞めろと止めるべきのなのだろう。けれど俺にはその資格は持ち合わせていないのだ。友人が復讐をしようとしていることを知って、戸惑いどころか感謝や喜びすら感じている俺に謙信を止める言葉は持ち合わせていなかった。
手帳と紙を元通りにして、何事もなかったかのようにベッドに横になる。
「やっぱりお風呂はええなぁ~ほかほかやで~」
何も知らない謙信が能天気な声で小躍りしながら部屋に入ってきた。
「伏見も風呂入ってきぃや」
向けられた屈託のない笑顔に先ほどの憎しみに溢れた紙と手帳が同一人物から生み出されたものなのだろうかと疑いそうになる。が、研究所で研究員の死体をライフルでぶち抜いた時の顔を思い出し、どちらもこの男の持つ顔なのだと思いなおす。あれほどの大きな憎しみを抱えながらも、こんなにも美しく人は笑えるものなのかと羨ましく思った。と、同時に俺の前ではその美しい笑みだけを見せて欲しいと思ってしまった。
「謙信の笑顔を見てるとなんか落ち着くわ」
「へへ、そうか~?褒めても何もでえへんで」
「ほんまにそう思っとんねん。だからな、ずっと元気でいて欲しいねん」
「俺、今も昔も元気だけが取り柄の男やで任せとき」
「うそつけ。お前、気付いとらんかもしれんけど目の下のクマ酷いで。寝られへんのやろ」
そういって、自分の引き出しから処方されている眠剤を取り出し、謙信の手に握らせる。
「自分の薬を他の人に飲ませるのホンマはあかんのやろけど、ちゃんと寝て欲しいから。謙信がそれ飲むまで俺は風呂入らん」
「そんなん言われたら飲むしかないやん……」
謙信が渋々と言った様子で口に入れてベッドの横に敷かれた布団に横になるのを見届けてから風呂に入る。
風呂から上がると謙信はスヤスヤと寝息を立てていた。眠剤を飲み、電気を消してベッドに横になる。薬の生み出した睡魔に抗うこともせず、俺は目を閉じた。
(殺す…殺せ……)
脳内に響く声に抗うこともせずに、触手を振り上げて謙信にめがけて振り下ろす。
歪に折れ曲がった身体と飛び散った血と肉塊に謙信の死を悟った。
その光景に俺はただ……安堵していた。ようやく死ねると安堵していたのだ。
そこで俺は目を覚ました。ベッドから起き上がると足元には謙信が横たわっていた。
綺麗な死体みたいだ。
そんなことを思いながらぼんやりと眺めていると謙信の身体が呼吸で微かに上下しているのが確認出来た。
良かった、生きている。
そう胸を撫でおろしている自分に気が付き、自嘲気味に笑った。夢の中で謙信が死んだことに安堵していたくせに、一体どんな心変わりだ。けれど、死んでいることに安堵した気持ちも、生きていることに安堵した気持ちも、そのどちらもが本物なのだと心のどこかでは分かっていた。謙信の存在は死ぬことを許さぬ眼差しであり、それは同時に生きているというただそれだけのことで全てを肯定してくれる眼差しでもあるのである。
俺はこの眼差しに生き長らえてしまっているのだ。
ぼうっと高校時代に読んだ詩の一説を思い出す。
『愛するものが死んだ時には、
自殺しなきゃあなりません。
愛するものが死んだ時には、
それより他に、方法がない。
けれどもそれでも、業が深くて、
なおもながらうことともなったら、
奉仕の気持に、なることなんです。
奉仕の気持に、なることなんです。』
中原中也の春日狂想だっただろうか。読んだ当時はあまり意味が分からなかったけれど、今ならば分かるような気がする。
「奉仕の気持ちに、か……」
スヤスヤと寝息を立てる謙信に朝食でも作ってやろうと台所に立つ。パンの袋が目に映り、昨日のフレンチトーストの優しい味が思い出された。そういえば、謙信が大好物だと言っていたっけ。
今日は俺が謙信にフレンチトーストを作ってあげよう。謙信のように上手く作れるかは分からないけれど。
冷蔵庫を開けると肝心の卵がなかった。近くのコンビニで卵を買ってこよう。事件後に一人で外出するのは初めてだ。けれど、今ならば死の誘惑に負けずに買ってこられるような気がした。
鍵と財布を持って玄関の扉を開ける。真夏のうだるような暑さが出迎えてくれた。ジリジリと灼けつくアスファルトの道を進み、コンビニまでたどり着く。コンビニ内の涼しい空気が熱のこもった身体を冷やした。
ああ、生きている。
太陽の焼けつくような暑さが、風の涼しさが、俺の五感を刺激する全てのものが俺に生の実感を与えてくれていた。卵を手に取り、レジに持っていく。それだけのことなのに、こんな俺でも生きるために行動し選択することが許されている世界への愛おしさと罪悪感で胸が張り裂けそうなる。
生きることはこんなにも愛おしく苦しいものだったか。目から熱いものが流れ落ちるのを感じる。店員が怪訝な顔で俺の顔を見ている。
慌てて拭うが次から次へと涙が流れ落ちてくる。事件から今まで泣いたことなど無かったのに。逃げるようにコンビニを後にする。流れ落ちる涙の理由が殺してしまった者に対する罪悪感なのか、救えなかったことに対する申し訳なさなのか、それとも生きているということそのものに対する感動なのか、どこから来るものかもすら分からなかった。
近くの公園で顔を洗って気持ちを落ち着ける。思ったよりも時間が掛かってしまったので謙信が起きて待っているかもしれない。そう思いながら、家へと歩を進めた。
家の前の曲がり角を曲がると謙信が焦燥した様子で辺りを見渡しているのが目に映った。俺が声を掛けるよりも先に謙信は俺のことに気が付き、笑顔で駆け寄ってきた。その足は裸足だった。太陽に照らされ灼けつくような熱を帯びたアスファルトの上を意に介さず駆け寄ってくる。鉄板のように熱せられた地面を駆ける足の裏を想像し、ゾッとする。
「どこいっとったん?」
「コンビニや!そんなことよりお前、裸足やんけ!早く家戻るで!」
俺がそう声を掛けると謙信はようやくそこで靴を履いていないことに気が付いた様子で「ホンマや…」と呟いていた。呆けている謙信の腕を掴み、足早に家へと帰る。玄関で足の裏を見せてもらうと全体が真っ赤に焼け爛れており、所々出血していた。
「寝ぼけとったんかな~。いや~失敗失敗」
謙信は自分の額をピシャリと叩き、笑う。そのなんでもないことかのように振舞う謙信の優しい嘘が痛々しかった。本当は俺が居なくなって慌てたんやろ、と言いたい気持ちをグッと堪えて優しい嘘に騙されたふりをする。
「ほんまにアホやな。フレンチトースト食べたら病院行くで」
そう言ってフレンチトーストを作るために立ち上がると謙信が俺の手を掴み、引き留めた。
「伏見は俺を置いてどこか行ったりせんよな?」
不安げに揺れる双眸を安心させるために笑顔を作る。
「当たり前やろ。どこか行くときはお前も一緒や」
そういうと謙信は安心しきった顔で「良かった」と呟いた。
「伏見はフレンチトースト作るの初めてやろ、俺も手伝うで!」
「お前は怪我人なんやから座って待っとけって」
やいやいと言いあいながら台所に向かう。
さあ、フレンチトーストを作ろう。
牛乳と砂糖と卵を含んだ優しい味のパンは、今日も生の実感とほんの少しの幸福に満たされていた。
【END】
≪あとがき≫
中原中也の春日狂騒が凄く伏見の心境にリンクしていると思うんですよね。
http://nakahara.air-nifty.com/blog/2012/04/post-9be0.html
なので、伏見の共鳴感情の表を奉仕にしました。
引用したのは一番の詩の一部なのですが二番は『奉仕の気持になりはなったが、さて格別の、ことも出来ない。』と続くんです。伏見も格別のことは出来ないけれど日常の些細なことを周りに流されながらも丁寧に歩んでいき、そんな中で他の人々にも大なり小なり苦しみや悲しみがあることを知って悲しみに溺れないようにテンポよく人と交流を交わして生きていくのでしょう。
愛するものは、死んだのですから、
たしかにそれは、死んだのですから、
もはやどうにも、ならぬのですから、
そのもののために、そのもののために、
奉仕の気持に、ならなきゃあならない。
奉仕の気持に、ならなきゃあならない。