KING OF PRISM SSまとめ

太陽と吠える(高田馬場ジョージ+池袋エィス)

お題:夕陽+悔しい
高田馬場ジョージと池袋エィス 30分クオリティ

「総帥のバカヤロ~!!!」
大声で海に向かって叫ぶ。俺の叫び声は波音にかき消されて、どこかに攫われてしまった。
後ろで見ていたエィスが呆れたようにため息をついた。まるで他人事のようなその態度にムッとする。
少し離れた位置にいるエィスの手を引き、海の近くへ連れていく。
「ほら、お前も一緒に叫べよ。声しか取り柄がないんだから」
そう揶揄うとエィスはムッとして大きく息を吸い込んだ。
「高田馬場ジョージの大バカヤロ~!!」
エィスの大声も海に吸い込まれる。それを嘲笑うように大きな波が返ってきてエィスの靴を濡らした。ぶちゅぶちゅと不快な音を立てて俺の方へ歩くその様子に胸がスッとした。

事の発端は今日のプリズムショーの大会だった。
大会はいつも通りに行われ、俺もステージ上でいつものように完璧にショーをした。
結果は百点満点。見に来ている総帥も満足できる出来だった。
ここまでは問題ない。問題はここからだ。
俺の次にショーをした如月ルヰの得点はジャンプのミスをして九十点だった。心の中でざまぁみろと呟く。きっと総帥も如月ルヰのミスを叱りつけることだろう。
そう思っていたのに。予想とは裏腹に総帥はコンディションの悪いルヰの体調の心配ばかりして、俺には一瞥もくれなかった。
そのことにショックを覚えた俺は半ばヤケクソでエィスを連れて車を走らせ、今に至るというわけだ。

「総帥が如月ルヰにぞっこんなのはいつものことじゃん」
濡れた靴で砂浜に“バカ”と書きながらエィスが口を開く。
「でも今日は一瞥もくれなかったんだぜ。チラッと見るぐらいはしてくれてもいいじゃん」
エィスの書いた字の前に“エィスは”と付け加えながら口を尖らせて文句を言う。
「俺はお前のショーずっと見てたよ。今日は完璧だった。」
エィスは“バカ”の後ろに“ではありません”と付け加えながら、何故か誇らしげに言い放った。
「今日も、だろ」
俺も負けじと矢印を書いて“バカです”と訂正分をつける。
「はいはい」
エィスは俺の字の前に“ジョージは”と付け加えた。
「あ、おい。何書いてんだよ」
書かれた文字に反撃を加えようと文字全体を見る。
「“エィスはバカではありません←ジョージはバカです”ってなんだこれ」
攻防の結果、出来上がった文字は海をバックに夕陽に照らされて影を落としていた。
その光景の間抜けさに思わず噴き出した。
「なんだこれ」
エィスと顔を見合わせて笑いあう。
ひとしきり笑い終わった頃には、今日の出来事などどうでも良くなっていた。


救いの声(高田馬場ジョージ)&君に誘われて(池袋エィス)

高田馬場ジョージのお題:【自分は弱いから】【うまく笑えているだろうか】【「大嫌い」】
池袋エィスのお題:【絶望の裏側】【隠してしまえばいいんでしょ】【僕の意思】

救いの声:
俺はうまく笑えているだろうか。時々不安になるときがある。
歌えない俺はGSを使うことでしかステージに立てない。
「大嫌いだ」
無能な自分もそれを良しとする自分も。
ステージに立つとファンの声援が聞こえてきた。
その声に自然と笑顔が溢れる。

自分は弱いからこの声にいつも救われていたんだ。

君に誘われて:
「お前は今日からGSだ」
そう告げられた絶望の裏側であいつは華々しくステージに立っていた。
悔しいけれど認めざるを得なかった。
(僕の意思なんて隠してしまえばいいんでしょ)
そう思って心に蓋をしたのに。
トラブルにも動じずショーをするあいつの姿に魅かれて、引かれてステージに踊りだした。

『誰も知らない』(ジョージ)&『僕だけが知っている』(エィス)

高田馬場ジョージのお題:【瓦礫の中の思い出】【隣にいるだけで】【関係ないことだから】
池袋エィスのお題:【君という鎖】【これが僕の運命】【青空の雨】

『誰も知らない』
コツコツと積み上げてきたものは、あの一瞬で崩れ落ちた。
瓦礫の中の思い出は今でも眩しく光を放つ。
君にとっては俺が隣にいるだけで良かったのに、俺は隣にいなかった。
君の人生は俺の人生と関係なく進んで行く。
それならば、せめて君の人生に幸あれと祈りを込めてショーをしよう。

『僕だけが知っている』
GSになった時、君という名の鎖に繋がれた。
君と僕とは一心同体。これが僕の運命だというのならば同じ道を歩んで行こう。
隣に立つ男は今日も一人の女性のためにショーをする。放たれた煌めきは彼女の道を照らす祈りとなり降り注ぐ。
彼のショーは今日も青空の雨のように彼女との間に虹を架けていた。

葡萄を一粒(高田馬場ジョージ)

お題:【おやつの時間】【出会いは別れの始まり】【すっぱいぶどう】

今日も女の子たちに電話を掛ける。
出会いは別れの始まりというけれど、俺にとっては別れは苦痛ではない。別れを惜しむような関係性なんて作る気はないからだ。
女の子と遊ぶ時間は至高のひと時。仕事で疲れた俺にとっては至福のおやつの時間だ。
おやつなんだから軽くていい。
たとえ、それがすっぱい葡萄だとしても。

レッドナイトショータイム(The シャッフル 短編・未完成)

エィスは気づけば見知らぬビルの屋上にいた。下の交差点で事故があったらしい。一面が血に濡れていて、車に轢かれたであろう男性の姿が見える。その人物はよく見慣れた人だった。いや、見慣れていると言う表現も相応しくない。
「俺……?」
信じられない光景にチカチカと目が眩み、喉がカラカラに乾いて上手く声が出ない。事故にあって倒れているのは池袋エィス自身だったのだから。

目眩がするような光景を前にエィスは何が起きたのか思い出そうと必死に頭を回転させる。その傍らで黒い猫がニャアと鳴いた。
「ああ、そっか」
猫を助けようとしたんだ、それで轢かれた。
思い出すことは出来たけれど、目の前の光景について理解は出来ない。幽体離脱かと疑い、目の前の猫を撫でるが感触はしっかりとあった。が、その感触に違和感を覚える。猫の背中に何か付いている。翼だ。よく見ると猫の牙はとがっていて、目は赤く光っている。
(吸血鬼みたいだ)
そう思った瞬間、目の前にいる猫の形をした“何か”に恐怖を覚え、その場を離れようと屋上から下に下りる扉に手を伸ばす。
扉についているガラスの窓が自分の姿を映し出した。
「何なんだよ、これ!」
扉の窓に映った自身の姿は先程の猫のように、牙と翼が生え、目は赤く暗い光を放っていた。そういえば、さっきから異様に喉が渇く。血が飲みたい。どうやら、俺は吸血鬼になってしまったらしい。

誰かに助けを求めようと細い路地を抜けて寮に急ぐ。大通りを抜けなかった理由は二つ、この姿を誰かに見られたくなかったから、もう一つは人を見かけると異様に血を吸いたくなったから。ただ、不思議なことに血を吸いたくなる対象には条件があるようで人間なら誰でも良い訳では無さそうだった。吸いたくなるのは大抵は未成年に見える人だったけれどその条件に当てはまらない人もいて他にも条件があるようだ。そんなことを考えながら寮に逃げ帰る。辿り着いた寮の廊下には時間が遅いこともあって幸い人の気配はなかった。

ジョージの部屋の前まで辿り着き、ノックしようとした所で自分が真っ先に助けを求めた相手が意外にもジョージだと言う事に気が付く。初めはいけ好かない奴だと思っていたけれどゴーストシンガーとして一緒に仕事をするうちに良いところも見えるようになってきて、軽い口先以上に信頼してくれていることも知っていた。けれど、この姿を見てジョージは何というだろうか。
一抹の不安を覚えながら扉をノックする。
扉を開けたジョージは一瞬驚いた顔をし、小さく舌打ちをした。が、その後はいつもテレビで見せる人懐っこい笑みを貼り付ける。
「エィスくぅ〜ん!事故に合ったって聞いてぇ俺、凄く心配したんだ。でもでも、元気そうで嬉しいジョイ☆ドッキリ成功ってやつ?」
どうやらジョージはドッキリだと思っているらしい。俺に向かって可愛らしく心配したと連呼している。どう説明したものかとジョージの方に目をやると首筋が目に映る。反射的に美味しそうだと思ってしまった。ダメだ、と思っても縫い付けられてしまったように首筋から目が離せなくなる。その場から逃げようにも脚が動かない。
「おい、大丈夫か?」
固まって動けないエィスと中々現れないスタッフにジョージはどうやらドッキリじゃなさそうだと悟ったらしい。
ジョージが不安げな顔で手を伸ばしてくる。これ以上近づかれると理性で抑えるのも限界だ。
「近づかないでくれ!」
ジョージの手を払いのけ、身体を突き飛ばす。突き飛ばされたジョージは尻もちをついて目を白黒させている。謝らなければという思いとは裏腹に、本能は今がチャンスだと告げていた。自分を何とかして止めなければと周囲を見渡すと窓際に置かれた椅子が目に入った。
「ジョージ、俺をあの椅子に縛り付けてくれ!」
ジョージは意味が分からないと言った顔をしながらも、エィスの鬼気迫る口調に並々ならぬものを感じ取り素直に従うことにした。掛けてあるベルトを数本手に取ると、もう片方の手でエィスの腕を引っ張る。その間エィスは自身の拳を噛んで衝動を必死で抑え込んでいた。

「で、エィスくんは何でこんな事になってるわけ?」
ジョージの手によって椅子に括り付けられたエィスは憔悴しきった顔で「分からない」と答えた。括り付けられた手を伝って先程噛んだ跡から血がポタポタと垂れている。
「よく分かんないけど血が飲みたくなるんだ」
笑えるだろ?と自嘲気味に笑うとジョージは心底面白くなさそうに笑えねぇ、と呟いた。

ここに来るまで起きたことを伝える。ジョージからもエィスが事故に合ったという情報を聞いていたと教えてくれた。たまたま搬送先の病院の近くにいたミツバが現在確認に向っているらしい。他のメンバーは交通手段がないこともあり情報が入るまでは寮で待機中とのことだった。
ジョージのスマホがピコンと光る。
「ミツバの奴見てきたってよ。意識不明の重体らしい」
「そっか……」
屋上で見た光景はどうやら嘘じゃないらしい。あの光景は夢で、喉の乾きは気のせいだったらと心のどこかで望んでいた希望は破れてしまった。夢であれば醒めてくれと思うけれど、ジクジクと痛む噛んだ跡が夢ではないと告げてくる。
「シャッフルのメンバー、全員ミツバの部屋に集まってるってよ。こっちに呼ぶか?」
リーダーである俺がこんな姿になってしまった以上、シャッフルの活動に支障をきたすことは想像に難くない。自身の置かれている状況について分からないことだらけだ。でも、俺が重体と知って心配をしてくれている皆に大丈夫だと伝えて、今後迷惑を掛けることを詫びないといけない。
「取り敢えず呼んで。説明はオレがする」
「んじゃ、呼ぶわ」
ジョージがメッセージを送った数分後にドアをノックする音が聞こえた。

ジョージが扉を開くと先頭にいたツルギと俺の目が合った。吸血鬼みたいな格好で椅子に縛られている姿を見て目を丸くしている。俺はどんな顔をすれば良いのか分からず苦笑いを返した。
「ジョージ!何これ?なんでエィスがここにいるの?もしかして、病院から引っ張り出してきたの?」
ツルギがジョージに詰め寄り、質問攻めにする。ココロとモンドも状況が理解出来ず固まってしまっていた。誤解を解かなくてはとエィスが口を開いたが、ミツバが間に入って仲裁をする。
「ツルギ、落ち着け。急にどうしたんだ。」
「やっぱり事故のことをジョージに伝えるべきじゃなかったんだよ、こんな事するなんてさ」
「確かに変なことしてるけど、理由を聞かないとだろ?」
「重体のエィスをこんなところに縛りあげる理由なんてあるの!?」
ミツバはツルギの剣幕から助けを求めるようにココロとモンドの方を見る。
「ま、まずはエィスの話を聞いたらいいんじゃないかな」
モンドの提案にツルギは取り敢えず納得し、エィスの方に向き直る。
「皆、何言ってるんだよ?」
ミツバはその光景を狐につままれたような顔で見ていた。
「エィスは病院にいて重体だって、さっき話しただろう?」
この中で唯一ミツバだけが混乱している。
「もしかして、ここにいるエィスが見えてないの?」
「そのベルトの付いた椅子にエィスがいるのか……?」
ミツバの問いに部屋にいる全員が首を縦に振った。どうやら、ミツバだけエィスの姿が認識出来ないようだった。

ミツバにはエィスの姿や声が認識出来ないため、今までの状況説明は全てジョージが行なってくれた。
「なるほどね〜」
説明を聞き終えたココロはすっかり落ち着きを取り戻していた。反対にミツバは理解できない、と頭を抱えている。
ミツバのみ見えない理由は恐らく意識不明となっている方のエィスを確認してしまったからだろう。ミツバの話によると家族と医療関係者しか意識不明のエィスを見ていないらしい。つまり、他の人は今のエィスの姿を確認できる可能性が高い。
とはいえ見た目が変わってしまっている以上、今まで通り活動は困難だろう。夜明けが近くなるにつれ、皆の疲労の色が強くなってきた。結論の出ないことを考えても仕方がないので、休息を取ってから再度集まる事にした。